Smiley face
写真・図版
前年産より2倍近く高くなった銘柄もある2024年産の米=2025年1月29日午前10時20分、東京都練馬区のスーパー「アキダイ」、渡辺洋介撮影

 〈茨城県産こしひかり 5㎏ 3580円(税込3866.40円)〉

 〈栃木県産こしひかり 5㎏ 3580円(税込3866.40円)〉

 1月下旬、東京都練馬区のスーパー「アキダイ」。ずらりと棚に並んだ米の値段は、前年に比べ1.5~2倍に高騰していた。秋葉弘道社長は「新米が出てくれば仕入れ値も下がると言われていたのに全然下がらない。この値段はバブルそのもので異常だ」と打ち明ける。

 買い物に来ていた東京都練馬区の主婦(39)は「小学生と年少の2人の娘を育てていて、主食の米は食べる量を減らせない。物価高で肉も魚も野菜も軒並み上がり、下がると言われていた米の値段が下がらない。家計を圧迫されてきついです」とため息をついた。

 総務省小売物価統計調査によると、2024年12月の米価格(コシヒカリをのぞく)の全国平均は5キロあたり3679円と、前年に比べて1515円高い。前年産米の生育不良やインバウンド需要、初の南海トラフ地震臨時情報を受け、買いだめなどが進み、昨夏は各地の店頭から米が消えた。

静観続けた農水省

 しかし農水省は静観を続けた。24年9月に坂本哲志農水相(当時)は「新米が順次供給され、円滑な米の流通が進めば、一定の価格水準に落ち着いてくる」と表明。新米が店頭に並ぶようになれば高値は収まるとの見通しを示したが、秋以降も上昇し続けた。

 要因について江藤拓農水相は24年12月、「集荷競争が起きている」と指摘。集荷業者や生産者が米をため込んでいることを示唆した。「商売だから干渉はできない」と語るにとどめていたが、備蓄米の放出方針にかじを切った。

 今回の農水省の方針が報じられて以降、価格の上昇圧力は弱まっている。民間の米調査会社「米穀データバンク」によると、年末から上昇傾向だった卸売りの米価格が1月末は横ばいで一服感が出ているという。同社は「農水省の方針もあり、今後は価格が下がるとみた業者の販売が増えたようだ。まだ様子見の段階だが、制度設計などが分かればある程度は市場に出回るのではないか」とする。

 価格高騰の背景について、農水省は農家を含めた「売り渋り」と指摘する。これに対し山形県内で大規模農家を営む60代男性は「集荷業者が米をため込み、価格をつり上げている」と不満を隠さない。

歴史的な米の価格高騰の中、農林水産省は31日、備蓄米の運用方針を変更しました。高止まりの裏には「売り渋り」があるとされますが、当事者たちの賛否は分かれ、農水省の対応は後手に回りました。

卸売り大手「外国産米を提案することに…」

 昨秋、「米の品薄」が相次い…

共有